11枚目。バンドの歴史を感じます。
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On-Suke(0n_Suke)です。
先月、初の主催フェス「SAI」を大成功に終わらせたACIDMAN。そんな彼らの3年ぶりの待ちに待ったオリジナルニューアルバム「Λ(ラムダ)」が12月13日にリリースされました。1週間、1周聴かなかった日などないほどに聴きまくった結果、特に心に残った5曲を紹介していきたいと思います。ああ、愛があふれて言葉が止まらないよ…!
Λ=11。
Λはギリシア文字で11番目の文字を表し、今作で11枚目のアルバムとなることと重ねているそうです。加えて、「宇宙定数」(それが何を意味するのか僕はさっぱりわかりませんが)を表しており、20年間、ひたすら宇宙と生命を歌い続けたACIDMANにぴったりな文字ですね。
暗さの中に秘める希望
今作もだいたい歌詞も音楽も、僕の理解に及ばない難解な曲だらけなのですが、今までの作品と変わらず、全体的にダークだなと思いました。でも、今まではあまりにも難しすぎるし、よくわからずなんだか暗いままだなあ(もちろんそれが素晴らしいところではあるのですが)という気持ちで聴き終わっていたのに対して、今作は絶望的ではあるが最後は希望をもって終われる曲が多いなと感じました。
例えば、ユートピアという曲がありますが、
拾い集めた光のかけら達
繋ぎ合わせたら星になったよ
君の涙もいつかどこかの花を
咲かせるさ
(ACIDMAN「ユートピア」より)
涙と花。哀しみの象徴の涙がつながって、花、いつかの「幸せ」につながるということでしょうか。
希望は「現世」だけにあるものではない
「最後の星」では、歌詞が世界の終わりとか絶望的な光景を歌いながらもメジャー調です。今、世界が終わるというのに、どこに希望が見えるのか。そう考えたとき、なんだか今よりもっと遠くの方、つまり「来世」に希望を見ているのではないかと、僕は思うのです。
作詞を手掛けている大木さんは、小さい頃からSF、オカルトマニアだったと公言していますし、強ちこの考えは間違えてはいないと思うんですよね。SFというよりか、むしろロマンチックでさえあると、僕は思います。
歌詞がシンプルに。
いろんなインタビューで大木さんが最近話しているのが、「言葉をシンプルにする」ということ。
ACIDMANの歌詞が難解な理由の一つに、「プラタナス」とか「コロイド」といった、宇宙や化学の専門用語が登場してくることだと思うのです。それに加わって「光」とか「太陽」とか自然的で抽象的な言葉が絡まって、その光景は何を意味しているのかを読み取るのが難しい。今までは。
それは、おそらく言葉の主語が「僕」ではなかったからではないでしょうか。僕が思うことというよりは、客観的な生命や宇宙の「事実」を述べたような詞だったと思うのです。
そういうことを踏まえて今作Λの歌詞を見ると、「僕」が思うことや伝えたいことを述べているような歌詞が多いような気がします。特にシングル曲となった3曲はすべて誰かに語り掛けているような言葉遣いが目立ち、その分ストレートに歌詞が伝わってきます。
何度も聴いてやっとわかるスルメな曲も好きですが、このようにシンプルに刺さるACIDMANの曲も新鮮でいいなと思いました。
個人的に強くおすすめしたい5曲。
ではでは、今作の12曲から特におすすめしたい5曲を、収録順に紹介していきます。
白い文明
白…何にも染まっていない色。つまり原初。宇宙の、生命の始まり。
君は何億の 僕ら何億もの
生命の果ての命さ
それは始まってるんだもう一度太陽を探して
(ACIDMAN「白い文明」より)
僕らの命は今まで紡いで来た生命の果て=白。その生命が繰り返してきたように、もう一度太陽を探そう。初っ端からACIDMANらしさ全開の曲でした。
この曲で一番グッと来たのがベースの音。おそろしく歪んでますね(笑)なんだか生命の誕生=宇宙の誕生、ビッグバンを思わせるような爆発音だなって。しかもいきなり入ってきますからね。おおぉ!ってなった(笑)
アルバムツアーの1曲目がこれだったらテンションだだ上がりですわ。
ミレニアム
前にもレビューを書いたことがあるのですが、今までの曲のパッチワークのような曲。いろいろなところに既成曲の姿が垣間見えます。
千年先できっと会おう
必ず君を見つけ出すよ
形を変えて僕らは 繋がるだろう君の最後の息で開いた 鮮やかな花を抱きしめるよ
果てしない夜のその先を見にゆこう さあ
(ACIDMAN「ミレニアム」より)
最後の息…つまり、「君」はすでにこの世にはいない。そして「僕」もいつかこの世を去って千年先で生まれ変わった姿でもきっと会おう。悲しいことを言いながらも、なんと希望にあふれているか。
20周年企画の真っ最中に発表された曲は、20年の活動の集大成といえるような曲。この先のライブでも定番となること間違いなしでしょう。
ユートピア
「プラタナス」のような、ジャジーな色が強い1曲。歌謡とインストのちょうど中間にあるような雰囲気がとても好きです。途中でけっこう歪んだギターも入るのですが、それでも曲の色を損なわない絶妙さはさすがです。ちなみにSuchmosもプラタナスが好きらしいですよ。
どうでもいいことですが、大木さんこのギターリフ弾きながら歌うんですかね…。だとしたらかなり難しそう。無難にルーパー使うのかな。
MEMORIES
ACIDMAN「らしくない」ポップさが印象的なナンバー。第一印象は「若々しい」。
なんだかルーキーから若手のバンドがよく作りそうなメロディラインなのですが、歴史がそれを匂わせないのか、ありふれたメロディにとてつもない重みを感じます。
よくよく聞いてわかったのは空間系のエフェクトをかなり上手に使いこなしているということ。一聴して気づけない細やかな工夫が、きっと普遍的なものを感じさせないのでしょう。
光に成るまで
今アルバムで最も好きになった曲。
彼らの傑作、「廻る、巡る、その核へ」のパート2のような曲だと、大木さんは語っています。10年くらい前に作った、歴史ある曲、ここぞというときに出そうと思っていたそうです。そしてこの21年目という節が相応しいと。
こんなに寝かせていただけあって、曲はとても壮大。
でもよくよく聴いてみると、実はコードも歌詞もシンプルなんですよね。サビで聴こえてくる対旋律も、ただ1音ずつ下っていくことの繰り返し。それなのにこのスケール感を描けるACIDMANの表現力には脱帽するしかない。
この曲でもベースが非常に歪んだ音で入ってくるのですが、「白い文明」とはまた違った印象を受けました。この曲で僕が想像したのは、「爆撃の音」。というのも、
遠くの国で涙が落ちる
とか
数え切れない 奇跡のシンフォニー
僕らは何故に 上手く踊れないんだろう?
(ACIDMAN「光に成るまで」より)
といった歌詞の中にそんな音が鳴るから。命が生まれることが、こんなに奇跡的ですばらしいことなのに、どうして僕らは上手く踊れない=わかり合えない、殺しあうのだろう?
だとしたら、僕らは何で生まれてきたのだろう?何のために生きてるのだろう?この命に何の意味があるのだろう?
でも、こんなに命の残酷で悲しい真実を歌っていながら、この曲にも希望が見えるのです。それは、最後のメジャーコード。
1番、2番はマイナーコードで終わっているのですが、アウトロだけメジャーコードで終わるのですよ。「光に成るまで」希望を捨てない、この命と言葉で祈り続けようという強い意志が、最後になる響きに全てつめこまれていると感じました。
命の光が当たる部分、当たらない暗い部分と真摯に向き合った曲だと思います。これを聴きながら眠りにつくのが、最近の日課です。本当に安らかに眠れる。
相も変わらず「刺さる」曲たち
ACIDMANのすばらしいところは、音楽で伝えたいことが今までずっとブレていないこと。それは、ほとんどの作詞・作曲を手掛ける大木さんのセンスでもありますが、それに付随するベースとドラムの理解力もあるからだと思います。
最近は、現世の「先」を歌うことも増えてきているACIDMANですが、それがうさん臭く感じないのはベースとするのが妄想や空想ではなく「命」という事実に基づいているからではなはいからではないでしょうか。だから、自然と「そうだな」とうなずける。僕はACIDMANに出会わなければ、こんなにも命について考えることはなかったでしょう。
そして、命についてたくさん考える分、自分も、そして自分以外の人たちの命も大切にしようと思える。今作もまた、命についてとても深く考えさせてくれるすばらしい機会を与えてくれました。
今ツアーは絶対参戦するぞ!
【※追記1】仙台、そして日本武道館に参戦してきました!レポートはこちら。
【※追記2】ライブBDももちろん買いました!レビューはこちら。
コメント
[…] LIVE TOUR “Λ”。最新アルバム「Λ」を引っ提げてのツアーです。 […]