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On-Suke(0n_Suke)です。
LAMP IN TERRENから、新アルバム「The Naked Blues」が12月7日にリリースされました。
活動休止を乗り越えて生まれた新生の1枚
前アルバムから約1年8ヶ月ぶりの新アルバム。この長期スパンの大きな要因は、バンドの活動休止。
それは、ボーカルの松本大さんの声帯にポリープができたから。この切除手術のためにバンド活動を中断せざるを得なかったのです。
大きな試練を迎えながらも、今年の8月に野音でのライブをもって完全復活したテレン。心配されていた松本さんの喉も、無事蘇りました。
赤裸々に想いを語る
「The Naked Blues」は、直訳すると「裸のブルース」。活動休止という大きな闇を彷徨って、新たに生まれ変わった今の4人は、生まれたての裸の赤ん坊と同じなのでしょう。
インタビューで松本さんは、「ありのままの自分をないがしろにして生きてきた」と語っています。だから、今作ではありのままの自分のことを認め、何も纒わぬ思いを晒け出すことを強く望んだそうです。
これについては曲を紹介する中でも書きますが、ところどころで、自分に正直に生きたい!という松本さんの気持ちが、確かに多くの曲でストレートに叫ばれていることがわかります。
ACIDMANのΛのときにも感じましたが、隠喩された言葉とかで抽象的な表現が主だったバンドがこうも直球な歌詞で歌うと、今までの反動からか心に刺さるものがありますね。
個人的におすすめしたい5曲。
前置きはこのくらいにして、今アルバムから特におすすめしたい5曲を紹介していきます!
1. I aroused
直訳:私は興奮した。
何に⁉️
とツッコミを入れたくなるタイトルですが、活動休止からの復活というテレンの経緯を知っている人は、この曲がバンドの覚悟を表していることがわかります。
向き合いさえすればいい
私を信じて入れば良い
眩しさに潰されずに 選んだ道を行けばいいこの胸の奥で揺らぐ
灯りを見つめて
あぁ そうだ 息している
(LAMP IN TERREN「I aroused」より)
もう迷わない。あるがままの自分で進んでいく。暗闇の中から再出発する彼らの決意が、マイナーコードからメジャーコードで着地する曲調とマッチしています。
新たなバンドの局面に対峙している興奮。それを見事に表現し切った、アルバムの1曲目に相応しい1曲です。
2. New Clothes
「新しい服」と名付けられたこの曲、活動休止前最後にリリースされた曲でした。
個人的には、この曲が最も活動休止までの松本さんの生き様を語っているように思います。
俺は恥ずべき裸の王様
理想を求めすぎて壊れた
(LAMP IN TERREN「New Clothes」より)
声帯にポリープを患い、手術を余儀なくされた松本さん。ボーカルにとって、声、ひいてはそのバンドの「質」に直結する声帯にメスを入れることは、まさに恐怖そのもの。肉体だけでなく、心も相当蝕まれたのではないでしょうか。そういうものも含めて、「壊れた」と。
そして壊れた松本さんが選び、袖を通した服が「ありのままの自分でいる」という未来。
そう、服は「生き方」を表していて、たとえ周りから否定されるほど「歪」であっても、自分にとってそれが「正しい未来」。
この曲はぜひ歌詞とMVをリンクさせて聴いてもらいたい。松本さんの苦悩と覚悟がより深く伝わってくるはずです。
3. オーバーフロー
オーバーフロー(overflow)は、「溢れる」の意。
その名の通り、松本さんの思いがいい意味でダダ漏れになっている1曲です。
今までのテレンは、悲しみや憂鬱を歌う曲も含めて、本当に「綺麗」でした。例えていうなら、満点の夜空で1筋の涙を流すような光景。超ロマンチックです。
しかし、そんなテレンとは180度ひっくり返したような歌詞がこちら。
もういっそフルボリュームで叫ぶよ
君に愛されたい!
(LAMP IN TERREN「オーバーフロー」より)
赤裸々にもほどがある!笑
でも、誰だってこのようなド直球な気持ち、抱えていると思うんですよ。ただ、いい歳こいて口にするのって、ものすごく恥ずかしいですよね。
それを代弁してくれるかのように、ボーカルの叫びに乗せて奏でられるこの曲を聞くと、「ああ、自分だけじゃないんだな、こんなこと思うのは」って、ホッとします。途中のシンガロングを一緒に歌って、「俺もだよー!」って伝えたい。
歌詞は今までとガラリと変わっていながら、曲調はむしろ3人時代を思わせるようなテイストで、初めて聴いたときは「メイ」を連想しました。
4. BABY STEP
今アルバムで一番お気に入りのナンバー。
可愛らしい響きの曲名ですが、意味は「偉大な一歩」。
これ、何かの映画のエンディングに採用されませんかね。それくらい良いこと言っていると思うんですが。
あぁ だって
僕が僕を好きになった瞬間から
世界は 全ては変わっていくのだから僕が僕として生きることこそが
偉大な一歩目だから
(LAMP IN TERREN「BABY STEP」より)
僕は松本さんの生き方にとても共感できて、「自分がどうありたいか」よりも「どういう姿だったら周りから好まれるか」ということを念頭に生きてきました。
だから、自分が望まないことでも、それで許されるのなら自分の意思を抑えて周りの望みを優先してきました。
でも、そういうときって必ずといっていいほど後から後悔の念がやってくる。そうやって悔いるから、自分に自信がもてなくなる。そんな自分が、どんどん嫌いになっていく。
そうやって生きてきた僕にとって、これはまさしく「赦しのバラード」です。
ああ、そうなんだ。弱い自分も、情けない自分も含めて、好きになって良いんだ。大サビで入るコーラスが、自分のことを温かく包み込んでくれているようで涙さえ流れてしまいました。
5. 凡人ダグ
屈伸でリズムを取りたくなるような、ちょっとしたおふざけ感すら感じられますが、歌詞の中身は結構ネガティブ。
今アルバムは、どちらかというと歌詞の良さが光る曲が多いですが、その中でもこの曲は純粋にメロディが素敵だなと思った曲。
アルバム「fantasia」に収録されていた「at (liberty)」でも聴けた、限界ギリギリの松本さんのひりつくようなハイトーンボイスが秀逸。
サビの途中にある、どこか音程が安定しない歌い方も、自暴自棄でぶっきらぼうになっている歌詞を良く表現していると思います。
間奏のギターリフは結構ガッツリ入っていて、16分で降っていくところは特に痺れます。
テレンが身近な存在に感じられる1枚
いかがだったでしょうか。
これまでファンタジックだったLAMP IN TERRENですが、今作はとめどなく人間臭さが溢れたものとなりました。
僕は神秘的な楽曲を作る人たちは自分とは全く違った感性や価値観を持っているんだろうなと思っていましたが、テレンも人の子。自分と同じことを思っていたことが嬉しくて、彼らとの距離がグッと縮まった、そんなことを感じる1枚でした。
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