久々に機材に関するお話を。
本日も創音においでいただき、ありがとうございます。 On-Suke(0n_Suke)です。
数年前からBOSSラインナップに登場した、WAZA CRAFTシリーズ。中には一時廃盤となった名機も、BOSSのテクノロジーでそのポテンシャルを持て余すことなく復刻される、マニア垂涎のシリーズです。
今回、そのWAZA CRAFTシリーズにメタル系ではど定番のMT-2ことMetal Zone、そして知る人ぞ知る隠れ名機、Dimension CことDC-2が選ばれ、それぞれWAZA CRAFTの証である「W」を関してMT-2W、DC-2Wとして登場しました。
MT-2は、20年以上愛され続けるだけあって、その機能もよく知られていますが、もう1つのDC-2…。こいつのことは、もしかすると初めて目にしたという方もいらっしゃるでしょう。
何かの作戦名のような名前をしたこのエフェクター、実は非常に使い勝手の良いダークホースだったのです。
分類的には「揺れ系」
DC-2は歪みや空間等の仲間で分けると「揺れ系」、つまりモジュレーション系のエフェクターに分類されます。コーラスやフランジャーと同じ仲間というわけです。
全く同じというわけではありませんが、回路等がコーラスと似ているようで、その音もなるほどコーラスのような音の重なりを聴き取ることができます。
大きな違いは「揺れ方」
コーラスと同じ分類といいましたが、このDC-2は厳密にはコーラスそっくりではありません。すでに数種のコーラスやビブラートペダルを製作しているのですから、これ以上揺れるエフェクターを作っても差別化が図りにくくなるだけです。
それでは、DC-2とその他モジュレーションペダルとを分ける大きな要因は何なのでしょうか。それは、揺れ方にあります。
DC-2は「揺れない」のです。
ん?揺れ方といっておきながら何「揺れない」と抜かしているのかと?百見は一聴に如かず。聴いていただけたらわかるはずです。
いかがです?「揺れない」の意味がおわかりいただけたでしょうか。コーラスに似た音色ではありますが、非常にクリアな印象を受けたのではないでしょうか。これがコーラスと似て非なる最大の要因です。
音を劇的に変化させるというよりは、音に隠し味を入れて深みのあるリッチな音色にするイメージです。ベースにもとても合い、そこらへんのベースコーラスより格段に良くなると述べる方もいるほどらしいです。
BOSS史上唯一の特殊スイッチ
DC-2を見て、他のBOSSペダルと大きく違う部分が何なのか、すぐにおわかりになったことでしょう。この、昔の扇風機のようなチープさを感じさせる長方形のセレクタースイッチ。
その通り、このDC-2、この4つのスイッチによって音色が変わります。1から4にかけて音色の変化の幅が大きくなっていきます。つまり、選べるエフェクトはたったの4種類のみで細かい設定が不可能という、何とも思い切った仕様なのです。
しかし、この4つのプリセットが意外と好評で、ギターのタイプを問わない相性の良さがあります。大きな変化をさせないからこそ万能に対応できるのかも。
いちいちベストポジションを探すよりは、予め使える設定があるのはプレイヤーにとっても都合が良いですよね。
このタイプのボタンを採用しているのは今までのBOSSの歴史においても本機のみで、後継機であるDC-3もパラメトリックのつまみに変化しました。唯一無二の外観という意味でも伝説のエフェクターといえます。
しかし、これだけの個性を持ちながら、やはり選択肢の少なさが仇となったのか、1985年11月の発売からたったの3年2ヶ月で販売が終了してしまい、その知名度の低さから「幻のエフェクター」と呼ばれるようになったのです。
DC-2Wはさらに音のバリエーションが増加
このような独特な特徴を持つDC-2がWAZA CRAFTシリーズとして復刻されたわけですが、ただ復刻するだけではないのがWAZAペダルの良いところ。その例にDC-2も漏れません。
Cモードは名機Roland SDD-320のサウンド
WAZAペダルの共通点として、名機の音をアップグレードしながら忠実に再現したスタンダードモード(Sモード)と、現代ミュージックで必要とされる要素を含ませて、より際立つサウンドを奏でるカスタムモード(Cモード)があります。
DC-2Wでは、レコーディング現場でよく用いられるラック式エフェクター、Roland SDD-320の音を忠実に再現したサウンドをCモードで手に入れることができます。
SDD-320はギターやシンセサイザー等、あらゆる演奏機器に深みを与えられるエフェクターとして愛されています。ラック式エフェクターはその構造上、総じてコンパクトエフェクターより機能・音質共に上です(あと値段も)。それが1つのコンパクトペダルに収まるなんて、DC-2が出た当時、果たして誰か考えていたでしょうか。
どちらのモードでも同時押しが可能
SDD-320では、エンジニアたちの間である「裏技」が広まっていました。それが、2つのセレクタースイッチを同時に押すことで、複数の効果を合わせるというもの。しかし、実際に表現できるのはたった2種類だけだったようです。
しかし、本機DC-2WではCモードで従来の同時押しによる2種類の音色と、さらに4種類の音色(中間音というそうです)が選べるようになりました。
つまり、1-2、1-3、1-4、2-3、2-4、3-4の6種類それぞれの組み合わせで独自のサウンドを奏でることができるようになったということです。
一方、従来機のDC-2では同時押しが不可能だったのですが、驚くことなかれ、この同時押しをSモードでも使うことができます。
各モードで単押し×4種類、同時押し×6種類で合わせて10種類、それが2モード分だから、合計なんと20種類もの効果を選べることができるようになりました。これだけあれば、つまみでなくても十分対応できるでしょう。
ギターエフェクターの枠に留まらない実力
2つのモードを備えたことで非常に強力になって帰ってきたDC-2W。特に名機SDD-320の機能を備えたことは、このエフェクターがギターのみならず、様々な機材に対応し得る力を得たことを意味しています。
「幻のエフェクター」なんて言われなくなる日はすぐそこまでやって来ているぞ!がんばれ、Dimension C!笑