「TS系の音」ていうけど、Tube Screamerがどんな音かわかってます?

エフェクター

何事も始まりを知ることが大事です。

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On-Suke(0n_Suke)です。

オーバードライブペダルを探していると、よく目にする「TS系」。歪みエフェクターのキャッチフレーズのように使われるこの言葉、いったいTSが指しているのが何か、皆さんご存知でしょうか。

「TS」は「Tube Screamer」の略称

TSは、Ibanezから出ているオーバードライブエフェクター、「Tube Screamer」(以下TS)の略で、1977年に発売したBOSSのOD-1と肩を並べる歪みの代表的なエフェクターです。世界的に有名な歪みがどちらも日本発というのはとてもすごいことですね。

現在の基本モデルであるTS9、原点TS808のリイシュー版、そしてハンドワイヤードで製造されているTS808HWが主なラインナップですが、ドライブ回路を2つ搭載しているものや、コンパクト版なども製造されています。

歪みとしてはイマイチ

実は、TSは歪みエフェクターとしてはあまり評価が高くありません。使ったことのある方はおわかりでしょうが、TSを踏んだだけで、想像以上に音がこもります。

mozaic

イメージとしては、こんな感じ。モザイクです。「像」がはっきりしないんですよ。かなり中域よりな音なので、音抜けも格段に悪くなります。
これほどまでに歪みの質はぼろくそに言われているのに、なぜ昨今の歪みエフェクターにおいて基準の音となっているのでしょうか。

真価はブースターとしての役割にある

boost

TSが名を馳せた理由は、実はオーバードライブよりもブースターとしての価値が非常に高かったためです。クリーンでハイを強めにしたまま歪ませると、耳に刺さるような痛い音になりがちですが、TSを噛ませることで音抜けや分離感を保ったまま、その耳障りな高域を取ることができるのです。

その理由は、TSが非常にミドル寄りな歪み方をしていることにあります。Marshallなどのスタックアンプにつなげば、強く歪ませたときにおこる、「ヴーーーーン」というあのギターから出ているとは思えないようなブーミーな低音を削ってミドル寄りにしてくれます。アンプをハイゲインで使うギタリストは、ドンシャリな音色の傾向があり、サスティンがあまり稼げないのですが、TSを使うことで足りないミドルとサスティンを十分確保することができるわけです。

この特性のために、アンプの音色を極端に変えることなく歪ませることができるので、アンプのゲインでは上げきれなかった分を補うような、まさにブースターとしてとても有用な音だったわけですね。

で、実際どういう音なのよ?

まずは実「聴」してみよう!

TS808

何はともあれ、オーバードライブの原点の音をまずは聴いてみようではありませんか。1つ目は、原点の原点、TS808。

Vintage Ibanez Tube Screamer TS808

かなりのビンテージな外見ですね。つまみ回すだけでガリが出るし(笑)「OVERDRIVE」のつまみをマックスにしても、リフで使えるほどの歪みではありませんね。そしてやはり歪ませるほど不明瞭。
逆にクランチサウンドはなかなかのものではないでしょうか。映像ではアンプにVOXのAC30を使っているそうですが、エッジは残しつついい感じに音が横につぶれて広がっている感じがしますね。

TS808HW

ts808hw

お次は、TS808をベースにした、完全ハンドワイヤリングのTS808HW。検索すればいくらでも中の基盤が見られますが、すごいですよ。プリント基板が見当たらず、配線だらけ。一見虫の行列が入っているみたいで気持ち悪いです(笑)ちなみに定価5万超えです。

ts808hw2

これほどの労力をかけたペダルから、どれだけの音がするのでしょう。いざ、実聴!

Ibanez TS808HW Tubescreamer

おお!良いですね!TS808のつぶれ感はありつつも、歪んだ音同士に、心地よい隙間が感じられます。TS特有のあの「不明瞭さ」が解決されている感じですね。歪みの幅はオリジナルと同じくそんなに広くないですね。ジャッキジャキにして使いたくなるようなペダルだと思いました。

TS9

ts9

最後は現行品のスタンダード、TS9。先の2品と違いはあるのでしょうか。

TS9 -Tube Screamer-

公式サイトのプロモ映像ですね。上の2つとくらべ、よく歪む印象があります。それも音の芯にしっかりまとわりついたような、それでいてざらつきも増したような感じがします。オールマイティに使えそうな気もしますが、無機質なトランジスタアンプだと、どちらも素直すぎる音の特性なので相性は悪いかもしれません…。真空管アンプを主に使う人にとっては、アンプのチャンネルを切り替える感覚で踏めるくらい素直にブーストしてくれる、頼れる存在になるでしょう。単純にボリュームを稼ぐブースターとしても使えそうですね。

ここからオーバードライブの進化が始まる

いかがだったでしょうか。このTSを起点として、数多くのエフェクターブランドが「TS系」のエフェクターを作ってきました。良い音でありながら、廉価で購入できたので、多くのエンジニアが手に取って改造することができたという説もありますが、それだけ、多くの人がこのTSに魅力を感じながらも改善すべきところがあるという思いを抱いていたということでしょう。

現在発売されているTS系の多くは、この細かい歪みを基本にしながら歪みの幅を大きくしたものだと、個人的には思います。SRV(Stevie Ray Vaughan)がTSを2台同時に使用していたように、TSの歪みは「使えない」のではなく、工夫次第ではいくらでも使えるようになる可能性を「あえて隠している」のでしょう。だからこそ、今TS系ペダルが市場にあふれているのではないでしょうか。

FulltoneやMAD PROFESSORといったブランドを筆頭に、TS系にも有名なペダルがありますので、いつかそれらをまとめた記事を書いてみたいと思います。

 

 

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